484のフィッシングブルース
はじめて「魚を釣りたい」と思った日の事を思い返してみた
幼少から10代の終わりまでをここ北海道は札幌市の東区「伏古」という町で過ごした。
隣町の苗穂町には484のブルースで有名な札幌刑務所がある
小学生の頃の遊び場と言えばもっぱら刑務所(塀の中ではないよー)の雑木林だった
そこでクワガタを探したり
捨ててあるエロ本を探したり、
木登りしたり
秘密基地を作ったり
捨ててあるエロ本をこっそり隠したりして駆け回って遊んだものだ
そして雑木林には今思えば直径20メートル程だろうか?
真ん中に島のあるドーナツ型の池があった
池は有刺鉄線でバリケードされていたが子供の自分の身長より低く
そのバリケードにはオニヤンマやイトトンボが羽を休めており絶好のトンボ捕獲ポイントであった
ある夏の日照りの続いた日
水の干上がった池を覗いて見ると、そこには無数の小魚がわずかに残っている水を求めてだろうか?必死に身を捩らせ跳ねていたのだ
子供心に、数日日照りが続けば干上がるような池に魚がいる事に感動を覚えた
図鑑かテレビで見た「干ばつの前に卵を産み、また雨が降るまで土の中では卵の状態で過ごし、雨が降ってから孵化する魚」に違いない!と
そして真っ先に思ったのが「あの魚を釣りたい!」であった
親にねだり釣竿を買ってもらい
同じく苗穂町にあった小さな釣具屋で「魚を釣りたいのだがどうしたらよいか?」と餌や仕掛けのアドバイスをもらい
雨が降って水の戻ったドーナツ池へと通い釣り糸を垂らした
何日か通うと店のオジサンともすっかり仲良くなり色んな話をしたんだと思う
来る日も来る日も、魚は釣れなかったが子供だった俺は「いかにも釣り人」って感じのチョッキ(フィッシングベスト)を着ればきっと釣れるに違いない!と漠然と思った
今も昔も「格好」から入る人間でw
しかし、店に置いてあったベストは子供の小遣いで買えるような物ではなく
なにかのTVコマーシャルにあったショーウィンドウのトランペットを物欲しげに眺める少年のような俺にオジサンは
「これで良ければ安く売ってあげるよ」と自分が着ているベストを指さした
飛び跳ねたくなるような嬉しさで
家に帰って親に相談したら
「あんた!いいかげんにしなさい!」
と、なぜかしこたま怒られた
それもそうだろう。ただでさえデキの悪い息子が連日、「刑務所に行ってくる」と言い残して出掛け、挙げ句の果には「知らないオジサンのチョッキを買い取りたい」と言い出したらw
で、それっきり刑務所の池にもオジサンの釣具屋にも行かなくなったと思う
あの魚は何だったのだろう?
確かめたくてもその雑木林もドーナツ池も
そしてオジサンの釣具屋も
今はもうない。